温故知新
新年初のレビューはヨーヨー復帰後初となるワンドロップ。年末の岩倉練習会にて知り合いの方に布教という名の試し振り会をさせてもらい、これを機に今買える機種をピックアップして購入。元々ワンドロップでなにかの機種は持っておきたいと思っていたので渡りに船と買ったうちの一つ。初心者ながらレビュー。 まず始めにワンドロップ共通の事項として全ての機種が10ボールベアリングというフラットベアリングを搭載している。あくまでヨーヨーの性能を引き出すのではなくフィーリングを楽しむ為に搭載しているわけだが、現代のセンタートラック及び曲面ベアリングに慣れているとこれが非常に厳しい。投げ出しから傾くのはザラ、縦コン横コン途中に傾く傾く・・・手癖のトリックすら通すのが困難なくらいに使い辛い。2000年代初頭までこのベアリングを競技者が使っていたと思うと相当苦労したのだなぁと思うと同時に曲面・センタートラックベアリングがいかに革新的な物だったのかを痛い程痛感できる。なので基本的にレビュー内容はベアリングを変更した後の物と前提として書いておく(センタートラックベアリングに換装)。 元々このヨーヨーの前身として54(フィフティーフォー)というヨーヨーがあり、ワンドロップ特有の機構である「サイドエフェクト」を初搭載した記念的ヨーヨーである。その第二世代なのがこの機種。ピックアップアイテムのページでも書かれているように前作を踏襲しつつも現代風にリファインされている。直径は名前の通り54mmのまま、幅を47mmまで引き延ばした。元々はラウンドだがラウンド+ストレート形状のようなシェイプになった。リムは分厚そうに見えるが内側は削って抉れており、そこまで厚く盛ってはいない。重量は少し重めでリムよりも中心に重量配分がいっているようらしく、ラウンドっぽいクラシックなフィーリングでありながら昔過ぎない使い心地が特徴。ラウンド系ヨーヨーだと基本的にフィーリング寄りに作られていることが多いが、この機種は人によっては一概に「気持ちよく振れる」機種とは言い切れないかもしれない。個人的には「もう少し全体重量ないし中心部が軽いと化けそう」な感じ。フィーリングは良いが人によっては少しどんくさいと思える操作性かな、と初心者ながら思う。その分安定性は高く、挙動をしっかり感じられるので一手一手をしっかりこなすスラック系等と相性が良さそう。逆に大きくぶん回すインフルエント系やホリゾンタル系は厳しそう。あくまで個人的意見なので人の腕によって千差万別になるのはあしからず。 この機種には真鍮のサイドエフェクトが同梱されており、初期搭載のウルトラライトとの振り比べも可能。サイドエフェクトの利点としてフィーリングや使い勝手を手軽に変更できる点や軸回りが壊れても容易に交換して直すことができる点がある。更にベアリングロックが非常に低く、道具無しでベアリングも外せてメンテナンスも容易。サイドエフェクト自体もOリングで簡単にはめ込んであるだけなので子供の力でも容易に交換できる。かわりに回転精度は機種(個体差含む)によってまちまちであり、通常使用には勿論問題無いが普通の機種に比べると精度が落ちることがある。真鍮はサイドエフェクトの中でも一番重く、54ジェン2とは相性はそこまで良くない。元々54自体中心寄りの重心なのに真鍮で更に重くするとかなり動かし辛い。まあサイドエフェクトによるフィーリングの変化を気軽に楽しむ位の考えで一度付けてみるのは大いにアリ。こんな小さいパーツでフィーリングの変化が楽しめるのを実感できる機会は中々無い。最後に表面加工に触れるが、ワンドロップのブラスト加工は他のメーカーに比べて特殊で、見た目が荒くツルツル寄り。個人的な例えだと「長年さすってツルツルになった木製の取っ手」みたいな感じ。使い込まれたブラスト加工、みたいな感じだろうか。人によってはこれも好みが出るので一考しておくこと。 総評として、フィーリングを楽しむヨーヨーながらも他のラウンド系ヨーヨーと比べると独自の地位を築いている機種。サイドエフェクト搭載というのもあってこの機種一つで様々なフィーリングを楽しむ事が出来る(まあこれはサイドエフェクト機種全てに言えることだが)。ワンドロップ最初の一つ、とまではいかないが程よく古く、程よく現代チックな使い心地が面白いので気になったら(余裕があれば)購入するのをオススメする。 ・・・ここからは完全に雑談かつ余談であるが、正直今回ワンドロップの機種を買って思ったのは「もっと広まっていいメーカー」。今まで振る機会も触れる機会も少なかったのでワンドロップというメーカー自体「知る人ぞ知る、濃ゆいマニアックなメーカーで競技よりもフィーリング」という感覚だった。実際、練習会でもワンドロップを持っている人は極少数で、まだCLYW(現カリブー)の方が話題や所持者が多い。更には初期搭載がフラットベアリング、パッドも独自サイズと敬遠されがちな要素が多い。値段も昨今の円安をモロに受け、モノメタルでも一万近く、機種によってはバイメタル並というのも珍しくない。なので容易に手が出せないから食わず嫌いならぬ振らず嫌いみたいな考えが自分の中に凝り固まってしまっていた。けれども練習会の一件で意を決して買ったが、どの機種も全然現代で通用する機種だった。ベアリングを変更するだけで普通に使える。フィーリングを重視しながらもしっかり扱えるよう設計されており、フラットリムやグルーヴ形状など特異そうな形状が多くても振ってみると普通に使える機種だった、なんて事ばかり。サイドエフェクトも最初は違和感しかなかったが、実際に触れてみるとそんな悪い物でもなく、手軽にフィーリングを変えれる手段として好意的に捉えることができた。値段はどうしようもないが、ワンドロップは自社工場を持っている数少ないメーカーで、昔の機種がふと再販されることもある。現時点で発売されているリバースやディープステートは2015、2017年とヨーヨー界では結構昔の機種。可能性は低いながらもそうした昔の機種を入手できる機会があるのもワンドロップならでは。そう考えれば高い値段を払っても買いたい人もいるだろう。今の時代、「使い辛いヨーヨーを探す方が難しい」と言われる位、ヨーヨーは高性能化している。ワンドロップも例に漏れず、機種の中には完全に競技寄りの機種も存在する。なのでワンドロップを買ったことが無い人は「余裕があれば」是非とも何か一つ買ってみると見識が広まると思う。充実したヨーヨーライフを是非。